甲状腺機能亢進症の患者さんのステロイドカバー対策について
甲状腺機能亢進症の患者さんに手術をする場合に気をつけなければならないことがあります。
それは手術の合併症として甲状腺クリーゼが起こる可能性があることです。
甲状腺クリーゼとは甲状腺機能亢進症が悪化した状態です。
もし甲状腺クリーゼが起きてしまったら高確率で死亡してしまいます。
無治療だと約70%前後の確率で死亡し
治療をしたとしても約30%の確率で死亡してしまうのです。
「そもそも甲状腺クリーゼって何?」とよくわからない方は
こちらの記事をご覧ください。
これくらい甲状腺クリーゼは恐ろしいわけです。
甲状腺クリーゼは手術が原因で起こることがあります。
だから甲状腺機能亢進症の患者さんに手術をするときにはステロイドカバー対策をします。
「ステロイドカバーって何?」という方もいると思いますので詳しく解説します。
甲状腺機能亢進症の患者さんへの手術で実施するステロイドカバーとは?
人間はみんなストレスを感じたらステロイドホルモンを副腎から分泌します。
だからステロイドホルモンのことをストレスホルモンということもあります。
アレルギーの患者さんによく使うステロイドとほとんど同じです。
ステロイドホルモンはアレルギー以外にもショック状態といって
今にも命を落としそうな状態の方にも使用します。
ショック状態の方にステロイドホルモンを使用すると状態が改善することが多いからです。
手術は体にとって大きなストレスです。
甲状腺機能亢進症の患者さんにとっても手術は大きなストレスです。
だからステロイドホルモンが大量に分泌されるはずです。
でも、
手術中に思ったほどステロイドホルモンが分泌されなかったらどうなるのでしょう?
先ほど申しましたが、甲状腺機能亢進症の患者さんに手術をすると
甲状腺クリーゼという命に関わる状態に陥ることもあります。
甲状腺クリーゼの治療薬はステロイドです。
で、手術中でも自分の体からストレスを感じて十分なステロイドホルモンが分泌されればよいのですが、
もしかしたら十分なステロイドホルモンが分泌されない可能性もあります。
そうなると、甲状腺クリーゼを起こし、患者さんは死亡してしまうこともあります。
そんな最悪な事態を防ぐために
あらかじめ手術前にステロイドホルモンを患者さんに投与しておくわけです。
このことをステロイドカバーといいます。
ステロイドカバー対策をしておくことで
手術中や手術後の甲状腺クリーゼという最悪の事態を防ぐことができるわけですね。
以上が甲状腺機能亢進症の方の手術で行うステロイドカバー対策についてでした。
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